「のぉ、圭介君。君のにいさんのことでちょっと相談なんじゃが・・・。」
「お義父さん、私には兄はおりませんが。」
「なにを寝ボケたこと言うとるんじゃ。アルテアのことじゃよ、織絵の兄貴じゃ。」
「あぁ、そうか。そういうことになりますね。そっかぁ~、アルテア義兄さんか。なんかしっくりこないな。」
「じゃろ? じゃろ? う~ん、やっぱり君とは話が合うわい。でな、彼のことを何と呼べば良いかと思ってな。」
「織絵は、彼に対しては兄上と呼んでたみたいですが、周りの者に向かって彼のことをいう時はアルテアって呼び捨てにしてますよね。」
「うむ、さすがは王家の娘よ。しかし、儂らも一緒になってそう呼ぶのはちとマズかろう・・・。」
「そうですね。まずはやっぱり日本人としての名前をつけるところから始めませんか、お義父さん。」
「なるほど! 圭介君、さすがはこの儂が見込んだだけのことはある。で、何という名が良いかな?」
「ベガが織姫で織絵、てことはアルテアは牽牛星、彦星だから・・・。はっ! 牛彦ってのはどうです? お義父さん!!」
「牛彦? う~ん、牛彦ねぇ、う・し・ひ・こ・・・。」
「だめ・・・ですか。」
「いいじぁないか、牛彦!! 分かりやすくて言い間違えることもあるまい。やったな、圭介くん!!」
「お話中のところ、失礼いたしますっ!」
「どうした室崎。」
「アルテア様、意識を戻されました。」
「よ~し、今行く。」
「気がついたかね、牛彦クン?」
「ず~と眠っておられたので心配しましたよ、牛彦にいさん♪」
「・・・すまんが、もう少し寝かせておいてくれ。」
「黒崎でございます。お呼びでございますか? 御前。」
「この度の北斗の件、どのように思う?」
「はい、やはり白いコマンダーを奪ったあの禿頭の男の仕業では、と。」
「うむ。そして、おそらく10年前の、あの禿頭の男の仕業であろう。」
「まだ幼い昴様をお護りしきれなかったことは、私ども一生の不覚でございます。」
「そのことは申すでない。しかし、だ。あの男が再び現れたと言うことは、昴もヤツのそばに居るやも知れん。」
「ならばこの黒崎、伊賀者の面目にかけても、御兄弟を揃って奪還してみせましょう。」
「ガルファの方々。そちらの少年が乗るギアが欲しいというのなら、この私が造ります。だから、この私と北斗クンを交換して下さい。」
「何を言っているんだね、井上博士! ガルファの力がこれ以上強大になったら、この地球は一体どうなるというのだ?!」
「いやですよ、長官。私が本気で言っているとでも? 私がガルファのために電童を造るなんてこと、ある訳ないでしょう。北斗クンさえこちらに戻ってくれば、あとは学生演劇でならしたこの私の演技力で、見事帰還してみせましょう。」
「・・・そうか、よし!! では人質交換だ!」
「ゼロさんっておっしゃいましたっけ? さぁ~て、何から始めましょうか。とりあえず機獣たちの剣だの弓矢だの・・・、ヨーヨーなんかも造っちゃいましょうか?」
「貴様、妙にうれしそうだな。」
「いえ、実を言いますとね。電童動かすのにとても電力を使うじゃないですか。ただでさえ電気代がかかってたところに騎士凰牙まで転がり込んで来たでしょ。武器の開発費用がどんどん削られちゃって、 この私の溢れ出る才能を生かすチャンスがほとんどなくなってしまったんですよ。だから、こちらに来て久々に胸が踊ってるんです。さあ、やりますヨォ~!!」
「お聞きになりましたか、スバル様。人間と言うのは、かように自分の欲望にのみ生きるもの。皇帝陛下の御心に適わぬ、つまらぬモノどもなのです。」
「しかしゼロ、僕も兄上も、この男と同じ人間だ。人間には互いを結ぶ心の絆というものがあるということを、北斗が申していたが・・・。井上とやら、お前には地球に残した友や家族などはないのか?」
「家族・・・? ふっ。家族にする予定だった人はいましたよ。でも、彼女は僕の気持ちなど気づきもしないで、見合いをした飛行機乗りと好い感じになってしまって・・・。ウォ~~~!!! ◎×△*¥?#!!! 私には失う物なんか何もないんだァ~~~!!」
「ゼロ、この男を送り返してこい。」
「長官!」
「どうしたっ! 凰牙の所在が確認出来たのか?!」
「いえ、地域電力供給センターより、GEARに対する電力供給支援要請です。マンションと思われる民間の特定施設での電力消費が瞬間的に極大化、エリア全域での電力供給がストップした模様です。」
「なんとっ?! それは大変じゃないか!! よし、ガルファに発電施設を破壊された時の恩返しだ。 愛子君、すぐに要請を受入れると回答しなさい! 井上博士は、電童電池から一般送電ラインへの接続 系統を確立!
・・・しかし、こんな時にはた迷惑なやつがいるものだな。最近のやつらは自分の身の回りのことしか考えておらん。そういえば、最近私の住むマンションに越して来た親子も、見るからにわがままそうなやつらだったな。ファッションといいスキンヘッドといい、そのスジの人間かもしれん。この前も妙な3人組が転がり込んで来たし、さては組の事務所にでもするつもりか・・・?
おっと余計なことを考えてしまった。
愛子君、電力センターへの回答が済んだら、凰牙の探索に戻りたまえ!」
「っていうより長官、そのマンションが怪しいのでは・・・。」